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赤松 美紀・研究概要

赤松 美紀・研究概要

P-糖タンパク質(MDR1)の基質認識機構

  • 我々は日常生活の中で、医薬品・農薬・化学肥料・食品添加物など環境中に存在しているさまざまな化学物質に曝露されており、それらの中には人体にとって有 害なものが存在する。これら有害な物質に対して、我々の体はチトクロムP-450による代謝無毒化のほかに、有害物質を体外に排出することにより曝露を防 いでいる。その排出系の中で最も有名なものがABCトランスポーターの1種、P-糖タンパク質(P-gp)であり、ヒトの小腸や肝臓、血液脳関門などに発 現していることがわかっている。これまでにさまざまな医薬品がP-gpの基質や阻害剤になることは数多く報告されているが、農薬に関してはほとんど研究さ れていないのが現状である。本研究では、ピレスロイドや有機リン剤などの中枢神経系に作用する殺虫剤を含む、さまざまな農薬がP-gpの基質になり得るかどうかを検討した。スクリーニングの結果、P-糖タンパク質の基質となることがわかった農薬について、その類縁体についても検討し、定性的な構造活性相関解析を行った。また、農薬以外の化合物についてもスクリーニングを行ったところ、環状ペプチドの一つが基質となる可能性を示した。

薬物代謝酵素P-450の基質認識機構

  • 多くの医薬品は経口投与により腸管から吸収され、ヒト体内に取り込まれた後、肝臓などに存在する代謝酵素により代謝されて体外へ排出される。薬物代謝に関与する酵素系は、主にcytochrome P450 (CYP)スーパーファミリーであり、数種の重要なCYP代謝酵素が存在する。これらのさまざまな代謝酵素が化合物のどのような構造的特徴を認識して代謝反応を引き起こすかを知ることは、創薬科学においてきわめて重要である。まず、主要代謝酵素であるCYP3A4および遺伝子多型で日本人に欠損の多いCYP2C19を取り上げ、農薬の一つTebufenozideをモデル化合物として、その代謝物の同定を行った。その結果、ヒトCYP3A4では、それぞれB環エチル基1位(M1)、A環メチル基、tert-ブチル基が水酸化された3種の代謝物が得られた。一方、CYP2C19の場合、M1を含むB環エチル基のみが変化した3種の代謝物が得られた。また、両酵素の主要代謝物であるM1が不斉炭素を持つことから、各CYPにより生成したM1の立体異性体比に基づき、その立体選択性について検討した。異性体比から、CYP2C19はCYP3A4より立体選択的にTebufenozideのB環エチル基1位を代謝することがわかった。各代謝物生成の反応速度定数も求めた。他の化合物およびCYPについてのスクリーニングも、現在、進行中。また、代謝物のin silico予測を行った。ドッキングシミュレーションとTebufenozideにおける水素原子引き抜きのエネルギー計算に基づき、各CYPによるTebufenozide酸化部位の予測が可能となったため、代謝予測システム構築の基盤が築かれた。(科研費基盤(C) H22-24採択、報告書H22)

多様な化合物の人工モデル膜に対する透過性および腸管上皮細胞透過性予測

  • 医薬・農薬など多様な構造を有する化合物の小腸における吸収機構を解明するために、市販のさまざまな化合物を用いて、それらの人工モデル膜透過性を測定 し、受動透過について評価・解析を行った。また、人工モデル膜透過性と、腸管モデルであるヒト大腸ガン由来のCaco-2 細胞透過性との間の関係を検討し、Caco-2 細胞透過性予測に役立つと思われる知見を得た。

ベトナム・フエおよびタイ・バンコク近郊農業地帯における残留農薬調査

  • タイ・バンコク周辺地域においては、近年の急激な土地利用変化に伴い農業生産の増大が余儀なくされたことから、農薬の多投およびその結果として残留農薬に よる環境劣化が懸念される。しかし、その実態は不明である。本研究では、バンコク近郊へ赴き、農業地帯において使用されている農薬の調査を行った。また、 底質土および畑土をサンプリングし、それらに含まれる残留農薬分析を行った。それらのサンプル中に、問題ないほどの量ではあるが、数種の残留農薬が検出さ れたため、今後の継続調査が必要であると思われた。現在は、ベトナム・フエで同様の研究を行っており、残留農薬と土壌の性質、地形について関連性を見出した。(科研費、基盤(B) H22-24採択)

神経系に作用する殺虫剤の受容体との相互作用機講

  • ニコチン性アセチルコリン受容体に作用するクロロニコチニル系殺虫剤の受容体との相互作用機構を解明するために、アセチルコリンバインディングプロテインの結晶構造を元にして受容体結合部位の構造をコンピュータ上で作成し、得られたモデルと殺虫剤イミダクロプリドとの結合様式について検討を行っている。例えば,a7受容体loop E領域の特定のアミノ酸残基を変換した変異型結合部位とイミダクロプリドなどアセチルコリンアゴニストとの複合体構造作成を試みた。作成されたモデル構造に基づいて、受容体におけるアゴニストの認識様式変化が説明できた。
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